2010年8月3日火曜日

天地雅楽『天壌無窮 - Heaven and Earth Forever -』(2010)

天壌無窮( Heaven and Earth Forever)天壌無窮( Heaven and Earth Forever)
(2010/07/17)
天地雅楽

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https://itunes.apple.com/jp/album/tian-rang-wu-qiong-heaven/id463703789

 ニューエイジやフュージョン、ワールド・ミュージック、ポップスなど多彩な音楽性を織り込み、現代的なセンスを感じさせる活動を行っている雅楽フュージョン・グループ 天地雅楽(てんちがらく)の、通産4作目。1作目がマキシシングル、2・3作目がミニアルバム(いずれもほぼ廃盤状態)であったため、これが初のフルアルバム。メインの4人(篳篥[キーボード兼任]、笙×2、竜笛/リンベ[ドラムス兼任])に、ベース&ドラムス/パーカッションのリズム隊、ヴォーカル、フルート奏者、揚琴奏者、二胡奏者などが加わった「天地雅楽 HYBRID PROJECT」と称する大編成にて、雅楽をベースとしたバラエティ豊かなハイブリッド・サウンドを展開しています。また、08年に天地雅楽メンバー3人が結成したスピンアウトユニット 明日香の活動からのフィードバックもあり、本作収録曲のうちいくつかは明日香が08年に発表した『天地夢想』の楽曲のリメイクも含まれています。

 今回はプログレッシヴ・ロック的エッセンスや趣向を盛り込んだ作風になっており、間あいだに挟み込まれたサウンドスケイプ的なインタールードもさることながら、ピアノとフルートをフィーチャーした鮮やかな変拍子インスト曲「Spiral Staircase」から印象付けられます。続く「天界への階段」は明日香でも演っていた楽曲のリメイク。明日香ではキーボード/シンセがメインでありましたが、こちらはフルート&二胡をフィーチャーしたことでより伸びやかさと躍動感が強まり、生っぽさもグッと増した印象。一体となったアンサンブルが雄大なイメージを抱かせる「Continent Of Spring」は初期のレパートリーのリメイク。「故郷の砂」「故郷の風」は、共にたおやかな女性ヴォーカル(恐らく中国語?)をフィーチャーした歌もので、オリエンタルでしっとりとしたムードながら、随所でしっかりとアクセントも効いており、2曲とも本作の目玉たる秀逸なポップスに仕上がっています。NHKの番組劇伴としても採用された「寺の小道」は、明日香では2分少々の小品だった楽曲ですが、ここでは5分近くまで拡大。穏やかな雰囲気の中展開される、ピアノと雅楽アンサンブルの静かな絡みが聴きもの。ピアノのフレーズがどことなくキース・エマーソンのピアノソロの作風を匂わせる場面も。暖かみのある二胡の音色で送る「とおりゃんせ」のアレンジを経て、「Yellow River」はそのタイトル通り中国をイメージした1曲で、躍動的でモダンなアレンジもさることながら、イメージに広がりを与える揚琴と二胡の響きも印象深い。ラストは毎アルバムに必ず収録されている(明日香でも勿論演っている)、豊かなニュアンスに溢れた彼らの代表曲「天地乃響」で〆。確かな自信に溢れているのが伺える、流石の演奏で幕を閉じます。彼らのこれまでの活動の集大成にして、新たな活動の一歩を踏み出す節目ともなる1枚。ワールドワイドな活動も行っている彼らですが、国内での認知度もより一層上がって欲しいものです。

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