2014年11月29日土曜日

90年代テイストに溢れた痛快なインストゥルメンタル・プログレッシヴ・フュージョン ― IVORYBOAT『Big Bounce』(2014)



作編曲やセッション・ミュージシャンなどでも活動するコンポーザー/ギタリストの荒牧賢治氏によるインストゥルメンタル・プロジェクト IVORYBOATの通産七作目となるアルバム。'99年より作編曲者/演奏家として活動しており、OVA版「piaキャロット」のエンディングテーマの作編曲や、PS2ソフト「G-SAVIOR」でのギター演奏、水谷優子さんや浅川悠さんら声優の企画アルバムの楽曲、近年では「動画戦隊アニメンジャー」などの主題歌を担当されていたようです。ソロアーティストとしては、2004年発表の1stアルバム『Don't leave the music alone』以降、約二~三年のペースで現在までコンスタントなリリースを継続。音楽的影響元にはパット・メセニーやスティーヴ・ヴァイ、ショーン・レーン、ジェフ・ベック、松本孝弘といったプレイヤーの名前が並んでおります。ギター/プログラミングは全て荒牧氏という完全ソロ体制で制作された本作は、全編に渡って爽快なテクニカル・インストゥルメンタルを聴かせる充実の内容です。オープニングを強烈にシャープな印象で飾る"Cold FusionReactor"や、"Everywhere Comes The Sun"で聴かせる、シンセサイザーの効果的なアクセントも加えたサイバーなタッチのテクニカル・フュージョン/プログレッシヴ・メタル路線のサウンドは、90年代の色合いを強く感じさせます。個人的には、かつてZOOMから発表された対戦格闘ゲーム「ゼロ・ディバイド」の楽曲を思い起こしました(同ゲームの楽曲もまた傑作の誉れ高い仕上がりです)。パット・メセニーやチック・コリアの影響を感じさせるスパニッシュな要素も加味した"Revelation" "Still Hoping"や、ヘヴィなリフとフックのある展開を盛り込んだ"Fudo" "Kid's Own Army"。また、全三楽章からなる大曲"Electric Guitar Concerto No.2"は、オーケストレーションを押し出した情景的なシンフォニック・ロックを展開しており、技巧もさることながら楽曲志向である荒牧氏のスタンスが存分に発揮されたものになっています。フュージョン、プログレ、メタル、いずれのリスナーにも相応にアピールしうる技巧派作品として、オススメしたい次第です。また、本作より一ヶ月先駆けて、過去のアルバムからの楽曲のアコースティック・アレンジでリメイクしたベストアルバムも配信リリースされています。



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