2014年11月25日火曜日

フレンチ・ポップス界の重鎮の手腕が冴え渉る、アヴァンギャルドなガールズ・ポップス ― Jean Claude Vannier『Salades de filles』(2014)

Salade De FillesSalade De Filles
(2014/08/19)
Jean Claude Vannier ジャンクロウドバニエ

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 セルジュ・ゲンズブールやエリス・レジーナ、シルヴィ・バルタンやブリジット・フォンテーヌなど、名だたるシンガーとの作編曲仕事や数々の映画音楽を手がけ、ソロアーティストとしての活動も活発に行っているフレンチ・ポップス/シャンソン界の重鎮的コンポーザー/アレンジャーであるジャン=クロード・ヴァニエの最新アルバム。「Salades de filles(女の子のサラダ)」というタイトルからもうかがえるように、三人の女性ヴォーカルをフィーチャーした作品なのですが、長年に渡って実験的な作品を世に送り出し続けているヴァニエだけに、このアルバムも単なるガールズ・フレンチ・ポップスで終わらせるようなものではありませんでした。三人の女性のうち、Ilya BronchteinAlice Vannier(実娘)はシンガーとしての経験の浅いほとんど素人で、Laetitia N'diayeはファンク・バンドのシンガーも務めるパワフルな人材。そんな変則的な人選もまた、アルバムのカラーを少なからずユニークなものにしています。

 ヴォーカル・パフォーマンスはかなり奔放で笑い声やシャウトのみならず、"School girl's day""Ma petite philosophie"などではモノローグやエロティックな吐息、つたない口笛も頻繁に挿入されるといった具合。また、バックのサウンドはファズも効かせたいなたいエレクトリック・ギターがアクセントを与えているほか、軽快ながらもどこか気ぜわしさのあるバンジョーやマンドリン、パーカッションがあちこちで猥雑に鳴り響いております。ルーズなアンサンブルに飄々としたヴォーカルが乗る"Le cafe de la discorde"や、三人のコケティッシュなヴォーカルの個性がそれぞれはっきりとわかる"La vie en light" "Heureusement qu'on etait jolies"は、アヴァンギャルド/チェンバー・ポップとしての側面も十分です。バックバンドの面々には、ラリー・カールトンとロベン・フォードの2006年のフランス公演に参加していたギタリスト Denys Lable。デヴィッド・ボウイやルー・リードをはじめ膨大なレコーディングに参加する名セッション・ベーシストにしてプログレッシヴ・ロック・バンド SKYのメンバーでもあるHerbie Flowers。フランク・ザッパとピエール・ブーレーズの共演盤『Perfect Stranger』(1984)にも参加していたパーカッショニストのDaniel Ciampoliniといった、相応のキャリアの持ち主揃い。また、ヴァニエ自身がアコーディオン、フルート、クラヴィネットを担当しております。「老いてなお壮健」、そんな印象を十二分に感じさせるストレンジなポップスアルバムでありました。



Jean-Claude Vannier
Jean-Claude Vannier - discogs