2014年11月28日金曜日

ZABADAK『桜』(1993)


桜
(1993/01/25)
ZABADAK

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〈のれん分け〉という、ZABADAKにとって大きなターニングポイントを迎えることになる'93年作品。上野洋子さんが参加した最後のザバダックのアルバムであり、彼女は同年9月のライヴをもってバンドを脱退。レコーディングも緊張と衝突の連続のなか行われ、繊細な美しさと力強いエネルギーが全編を覆った、総決算的な内容になっています。参加したミュージシャン全員がこの曲を盛り上げようと鬼気迫っていたという吉良知彦氏のコメントの通り、熱のこもった祝祭的ムードに満ちたトラッド・ポップス「五つの橋」。上野さんの透き通ったヴォーカルに絡むヴァイオリンの甘美な旋律も出色な「アジアの花」。コーラス/ヴォーカルの暖かさが際立った「マーブル・スカイ」。新居昭乃さんの幻想的な詞に導かれるように、美しさが柔らかに包み込む「Psi-Trailing」。ジュヴナイル作品のような確固たる意思を感じさせる詞が強く胸を打つ「休まない翼」(自分はこの曲が一番好きです)。宮崎民謡にザバダック流の味付けを施し、シングルカットもされた「椎葉の季節」。静かな雰囲気を湛えながら徐々に盛り上がりを見せていく長編インストゥルメンタル曲「桜」。チュッチュルルルチュッチュルルルと滑らかに歌われるコーラス、鋭く切り込むカッティングギター、菊地成孔氏の入魂のサックスソロも耳を惹く「百年の満月」。水辺にぽつりとたたずむような音の数々に思わず胸を締め付けられる「歩きたくなる径」。そしてアルバムは、黄昏時に家路につく少年の情景がフラッシュバックする「Tin Waltz」で静かに幕を閉じます。どこか望郷の念も感じさせる一枚であり、末永く聴き続けていきたい名作であります。





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