2014年12月1日月曜日

超ド級スケールの熱狂的オーケストラル・アート・ロック ― THE RED PAINTINGS『The Revolution Is Never Coming』(2013)



オーストラリアのプログレッシヴ/ポスト・ロック・バンド The Red PaintingsTrash McSweeneyを中心に、ギター、バイオリン、チェロのアコースティック・バンドとして90年代末ごろから活動を開始、カントリー/フォークを機軸としたサウンドは、EPとシングルのリリースやツアーを経ていくなかでいつしかバロック、ポップ、パンク、メタル、シンフォニック・ロックを取り込んだミクスチャーなオルタナティヴ・プログレ・サウンドへと進化。ステージではライヴ・ペインティングやパフォーマンス・アートも組み込むという野心的な姿勢をみせ、SFやスチームパンク、宇宙人と舞妓を意識したとおぼしき奇妙なヴィジュアル・イメージもその一環であるようです。サイボーグ舞妓なジャケが目を引く本作は、2004年発表の『Your Tears Are Warning Signs』以来、約9年ぶりとなる2ndフルアルバム。世界中のファンから資金を募り、制作には五年を要し、世界各国の8つのスタジオを股にかけ、総勢35名のオーケストラ、総勢22名のコーラス隊を迎え、ハープ、フレンチホルン、テルミンなどの奏者も交えて制作した超ド級のオルタナ・プログレッシヴ/アート・ロックアルバム。エンジニア/ミキシングにはALICE IN CHAINSやロブ・ゾンビとの仕事で知られるBryan Carlstromが関与しています。



ドリーミーなエレクトロニカ調のイントロダクション"Vampires Are Chasing Me"を経て、アジテーションのようなシャウトで開幕する"Dead Children"。ダンサブルなインダストリアル/デジロック チューン"Wasps"。甘美なヴォーカルと華麗なストリングスが艶やかに絡むオーケストラル・ポップ"Walls"。アルバム中盤はナレーションも交えてシアトリカルな趣向の強い"Streets Fell Into My Window"や、シングルカット/PVにもなっているキラーチューン"You're Not One Of Them"、頼もしいシンフォニック・ロック"It Is As It Was"など、曲展開の複雑性も増してゆきます。"Hong Kong"は、その曲名に反して大々的に「さくらさくら」の旋律がフィーチャーされた奇妙なエイジアン・コンセプトの大曲。後半ではヘヴィ・ロックへと変貌し、ストップ&ゴーとスクリームが交錯するぶっ飛んだ曲展開も聴きものです。ラストのタイトル曲はオーケストラ、コーラス隊をフル投入しての圧巻のフィナーレを演出。インディー・ロックの実験性とアリーナ・ロックの華々しさを兼ね備え、鮮やかなエモーションで透過したドラマティックな爆発力はとてつもないものです。アルバム通してここまで熱狂的な一枚というのはなかなかないのでは。





The Red Paintings - Official
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