2015年4月9日木曜日

シネマティックなレアグルーヴ系プログレッシヴ・ロックを聴かせるイタリア異色の新鋭バンド ― LA BATTERIA『La Batteria』(2015)



 今なお新鋭バンドに事欠かない豊かさを誇るイタリアのプログレッシヴ・ロック・シーンですが、このLA BATTERIAはちょっと変わり種といえます。60~70年代の映画サウンドトラックを愛好する四人の士によって2012年ごろに結成されたラ・バッテリアは、エンニオ・モリコーネ、ステルヴィオ・チプリアーニ、ブルーノ・ニコライ、アレッサンドロ・アレッサンドローニといったコンポーザーや、イタリアン・ホラーとプログレッシヴ・ロックをつなぐ最重要バンドのGOBLIN、そしてライブラリー・ミュージック・バンドI MARC 4などからの影響をダイレクトに反映させたサウンドを標榜しています。サウンドトラックからの強い影響下にあるプログレ・バンドでは、ANEKDOTENやLANDBERKのメンバーを中心に結成されたスウェーデンのMORTE MACABREや、GUAPOやANGEL WITCHのメンバーからなるイギリスのZOLTANがおりますが、両バンドともカルト・ホラー寄りの作風であることを考えると、マカロニ・ウエスタンやスパイ・アクションもののムードを湛えるラ・バッテリアはだいぶ毛色の異なる手合いです。作風が作風ゆえに、マンドリンやクラシック・ギターも操るEmanuele Bultriniと、ハモンドC3やクラヴィネット、フェンダー・ローズを筆頭に各種鍵盤楽器を駆使するStefano Vicarelliのふたりの演奏は、往年のテイストを“再現”する上でたいへん重要なファクターとなっております。



 ワウをかませたカッティング・ギターがチャカチャカと軽快に刻み、ファズったベースがジワりと染みこむ"Vigilante"や、スモーキーなオルガン・サウンドが転がる"Schenario"。『荒野の用心棒』などのテーマ曲で印象的な口笛を残してきたアレッサンドロ・アレッサンドローニへのリスペクトをうかがわせる口笛フレーズで幕を開け、女性スキャットが哀切の花を添える"Manifesto"。オルガンとチェンバロの響きが枯れた味わいをいっそう引き立たせる"Persona Non Grata"、かと思えばいなたく疾走するオルガン・ハードロックを聴かせる"Zero"など、楽曲はサイケデリック・ロック、クラシカル、アフロ・ファンク、イタロディスコのテイストも滲ませる一方で、ときにポール・モーリアやヘンリー・マンシーニ、果てはジョン・カーペンターへのオマージュも仕込んでいるのではとも思ってしまう、懐の広さも感じさせるフレキシブルなサウンドがたまりません。マニアックなプログレ・リスナー向けなのはもちろんなのですが、それ以上ににマカロニ・ウエスタンやスパイ・アクション映画好き、モンド/レア・グルーヴ好きに十二分にアピールしたい魅力のあるバンドです。このデビューアルバムでゴキゲンなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。



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