2015年5月16日土曜日

非現実系テクニカル・ポップ・バンドの、のっぴきならないマキシシングル ― ぱっちりひつじ『ドSピエロのボブ』(2015)


https://wx11.wadax.ne.jp/~ku-kan-so-ko-com/3_463.html

 非現実系テクニカル・ポップ・バンド ぱっちりひつじの約二年ぶりとなる2ndマキシシングル。アルバムに収録するにはいささかクセが強いなという曲を集めたのが前作マキシシングル『ぽぷぺぴぱ』ですが、本作も同様ののっぴきならない路線です。むしろ、ぱっちりひつじ史上極最短の楽曲と極最長の楽曲が収録されているぶん、高低差の激しさではそれ以上かもといったところ。



 タイトルチューン"ドSピエロのボブ"は、心優しい内面を持ちながらドSを演じるアンヴィヴァレンツなピエロの悲喜こもごもな姿を軽快なハード・ポップ調のサウンドに載せて描いたキャッチーな一曲。一転して間奏パートでは泣きのギターソロがフィーチャーされており、出色です。"にくきゅうとかいてレイコとよむ"は8秒の曲……というよりはトラック。内容は聴いてのお楽しみですが、NAPALM DEATH的な瞬発力をぱっちりひつじ的に解釈するとこうなるというわけです。"あこがれのル・ソホラ"は、魔女の店にあこがれる子供の身に起きた不思議極まる体験を描く、ぱっちりひつじの十八番といえるファンタジックかつ奇妙な味が存分に出たストーリー調の一曲。007メインテーマのパロディのようなイントロから、酔っ払ったバッキングコーラスにテルミン調のサウンドといったユニークな趣向が盛り込まれており、特に終盤に登場する「魔女」の放つセリフが強烈の一言。でも、根幹部分はヘヴィなグルーヴ・メタルです。個人的には筋肉少女帯の内田雄一郎氏の楽曲に通じるものを感じました。ラストを飾る"ほんじつのニュース"はバンド史上最長となる約16分の長尺曲。何者かによって太い眉毛の書かれた競走馬や、ブタの貯金箱をダストボックスとして導入するなどといったしょうもないニュースをやる気なく読み上げる男女のニュースキャスターの生々しい一幕が展開されたのち、10分以上にわたってバンドの即興パートが繰り広げられる超フリーフォームな内容。前提からしておかしな状況ですが、そこからさらにおかしな状況へと導かれるかのような、まことに「混沌」と呼ぶにふさわしい長丁場なのですが、テルミンがあちこちに乱れ飛び、各パートがノイジーな軋みをあげる間あいだのふとした瞬間に差し挟まれるピアノの旋律が非常に美しかったりして、不思議な感慨をおぼえながらも投げっぱなしで幕を閉じます。

 ボーナス・トラックには今回も各曲のインスト・トラックが収録されており、「歌や楽器を重ねて加工した状態であれば、動画サイトへのアップロードは自由」とのこと。……しかし、どうカヴァーすればいいんでしょうか(笑)


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