2015年7月8日水曜日

アルゼンチンの作曲家が60年代に残した、珠玉のラウンジ・ジャズ ― WALDO DE LOS RIOS『Su Musica & Su Quinteto』(2007)

Su Musica Y Su Quinteto
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DE LOS RIOS WALDO
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 アルゼンチン・ブエノスアイレスの作曲家/ピアニスト ワルド・デ・ロス・リオス(1934-1977)。音楽家の父と母のあいだに生まれ、幼少期より母のツアーに帯同する形でピアニストとして活動。国立音楽院では、テオドロ・フックスとアルベルト・ヒナステラから指導をうけております。バンド活動後、アメリカ、そしてスペインへと渡り、フリオ・イグレシアス、カリーナ、マリ・トリーニ、カミーロ・セストなど、数々の著名な歌手のアレンジャーを手がけ、一世を風靡します。スペインの国民的歌手であるミゲル・リオスが、ベートーベンの交響曲第九番「喜びの歌」を歌い上げ、各国でヒットを記録した'70年の"Song of Joy"でのオーケストラ・アレンジがよく知られています。彼はピストル自殺により四十三歳という若さで亡くなっておりますが、生前に制作した作品は膨大な数にのぼり、ポップス編曲のみならず、イージーリスニングやタンゴ、クラシック作品、「象牙色のアイドル」(1969)「荒野のライフル」(1971)、「ザ・チャイルド」(1976)など、TVや映画の劇伴音楽も数多く手がけております。





 本アルバムは、彼の没後三十年目にリリースされたコンピレーション・アルバム。ピアノ/オルガン、ヴィブラフォンを擁したクインテットで60年代に録音した音源を十五曲収録しています。大半はオリジナルですが、"Metamorfosis Folklórica"はバッハの二声のインヴェンションのアレンジで、アルバムの最後の三曲はアレンジ。ザンバやチャカレーラといったフォルクローレや、クラシックの要素をポップス/ジャズになめらかに落とし込む非凡なセンスが発揮されており、師であるヒナステラからの影響もうかがわせる鮮やかなものです。華麗なピアノと小気味のよいパーカッションの絡みでグイグイと引っ張ってゆく"El Hacha Y El Quebracho"や、ヴィブラフォンとピアノの瀟洒な響きに酔わされるラウンジ・ジャズ"Zamba en Nueva York" "Sevillanas"。浮遊感に富んだ趣向が結果的にサイケデリックに感じさせる"El Algarrobo Que Hablaba Con los Pájaros" "De Donde Vienen las Guitarras"、絶妙に挿入されるストリングスでよりシネマティックな情景を喚起させる"El Último de los Matacos"など、いずれも柔らかで洗練されたアレンジの効いた珠玉の仕上がり。時を経ても古びない輝きが詰まっています。

http://www.waldodelosrios.es/

WALDO DE LOS RIOS - discogs