2015年11月27日金曜日

もはや無敵なProg Powerの精髄。イタリアのベテランの通産十作目 ― ELDRITCH『Underlying Issues』(2015)

 イタリアのプログレッシヴ・パワーメタル・バンド エルドリッチ。前身バンド ZEUSから引き継ぐ形で1991年に結成され、1995年にInside Outよりアルバム『Seeds of Rage』でデビューした彼らは、ここ日本でも国内盤がマーキー/ベル・アンティークや徳間ジャパンからのディストリビュートで紹介されてもいました。初期のサウンドは、DREAM THEATERやFATES WARNING、SIEGES EVENなどからの影響を感じさせつつも、よりキーボードを強めにフィーチャーしたもの。その方向性は『El Niño』(1998)からよりヘヴィな色を強め、一皮剥けた彼らはTHRESHOLDやPain of Salvationとツアーも行いさらなる成功をおさめることになります。その後、『Reverse』(2001)ではモダン・ヘヴィネス寄りに、『Portrait of the Abyss Within』(2004)からはスラッシュ・メタル寄りのサウンドになり、同作と『Neighbourhell』(2006)では「WAR PIG」(モーターヘッドのシンボル)のようなキャラクターをジャケットに押し出したりもしていました。所属レーベルも、バンドメンバーも、方向性も幾度となく変えながら、コンスタントなリリースペースは維持し続け、結成25周年を迎えようとしている彼らですが、近年はDGMやSADISTも所属するレーベル Scarlet Recordsのもと、再び正統派プログレッシヴ・パワーメタルに回帰しています。





 本作『Underlying Issues』は、前作『Tasting the Tears』からわずか一年半のインターバルでリリースされた通産十枚目のオリジナルアルバム。現編成は、テレンス・ホラー(vo)、ユージーン・シモーネ(g)のオリジナルメンバー二人を中心に、今年アルバムデビューしたプログレッシヴ・メタル・バンド ENSIGHTのリズム隊でもあるアレッシオ・コンサーニ(b)、ラファーエル・ドリッジ(ds)、IN MEMORYのルッジ・ジャンネッシ(g)の五人。『Neighbourhell』より参加していたジョン・クリスタル(b)は、本作のレコーディングをもってバンドを脱退したようです。マスタリング/ミキシングは、EMPYRIOSや近年のDGMのギタリストとして要となっている シモーネ・ムラローニ。ヘヴィなリフを中心として組み立てられたバンドのストロングなサウンドにおいて、彼はまさに頼もしい味方であります。ミドルテンポの"The Face I Wear" "Bringers Of Hate"や、パワーバラード"To The Moon And Back"でもしっかりと魅せてくれるのも強みです。本作の二曲目"Danger Zone"はたいへんな白眉で、ギッシリと詰まった音のなかでキャッチー極まるサビが光るシブいキラーチューン。まさに「Prog Power」の理想を体現したような一曲、オススメです。また、ラストはエッジをたっぷり効かせたスラッシュチューン"Slowmotion K Us"で強烈に締めくくります。これまで辿ってきた音楽性の変遷を血肉として鍛え上げてきた素晴らしきProg Powerの精髄が味わえる一枚。これを向かうところ敵なしといわずしてなんといいましょう。

http://www.eldritchweb.com/

http://www.scarletrecords.it/bands/Eldritch/band.htm
http://www.metal-archives.com/bands/Eldritch/591
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=758