2016年4月10日日曜日

フランス/エチオピア混合バンドが生み出す超高濃度プログレジャズエスノグルーヴ演歌 ― uKanDanZ『Awo』(2016)




 KOUMAPolymorphieなど、オルタナティヴ・ジャズロック系バンドでも活躍するフランス人ギタリストのダミアン・クリュゼルを筆頭に、ユーモア精神に満ちたアヴァン・ロック・トリオ POiLでも活動するドラマーのギレム・メイエール、ルイ・スクラヴィスやソフィア・ドマンシッチなどとの共演歴もあるテナーサックス奏者のリオネル・マルタン、パオロ・フレスとの共演歴のあるキーボーディストのフレデリック・エスコフィエといった若手のジャズ/ロック ミュージシャンと共に編成されたバンドに、エチオピア人歌手 アスナケ・ゲブレイエスが加わって2010年に結成されたフランス/エチオピア混合バンド ユーカンダンツ。グループ名は、マドンナの"Into the Groove"の詞の一節をオランダ訛りにしたもの。バンド自ら“Ehiopian Crunch Music”と呼ぶその音楽性は、フランス由来のアヴァン・ジャズ/ロックにエチオピア由来のグルーヴ感が高い濃度で融合したミクスチャー・ワールドミュージック。アスケナのコブシの効いた強烈なヴォーカルパフォーマンスと、自由自在の可変に富む強靭なジャズロックアンサンブルがシノギを削りあい、プログレッシヴジャズエスニックグルーヴ演歌ロックとでもいいたくなるような、血のたぎるハイテンションサウンドです。ブッ飛んだアレンジとパワフルなパフォーマンスでヘヴィにアップトゥデイトした土着の伝統曲や60~70年代のクラシックなエチオピア歌謡もふんだんに盛り込み、2012年にリリースされたデビューアルバム『Yetchalal』は、ここ日本でも好評をもって迎え入れられ、2013年には来日も果たしております。




 そして、約四年ぶりとなるアルバムが、本作『Awo』。5曲のカヴァー/アレンジと、バンドオリジナルの大曲を収録した全6曲(+ボーナストラック)です。また、前作発表後、フレデリックが脱退し、POiLとも交流のあるアヴァン・ロック・バンド「NI」のベーシスト ベノワ・ルコントが加入しています。キーボーディストの後任がベーシストというのも珍しいですが、これにより、サウンドのヘヴィプログレ度はより増しました。KING CRIMSONもかくやといったヘヴィなリフとサックス、ドゥームメタルにも肉迫せんばかりのアレンジが施された、60~70年代エチオピアンファンク歌謡の帝王トラフン・ゲセセ"Sèwotch Men Yelalu"のカヴァーにもよくあらわれています。続く"Tchuéten Betsèmu" "Lantchi Biyé"も、トラフンのレパートリーのカヴァー。オリジナルはクラール(エチオピアの民俗弦楽器)の弾き語り曲だという"Endé Iyérusalem"は、リズム隊のポリリズミックなグルーヴとヴォーカルの節回しがえもいわれぬ調和をみせるチェンバー・ロック・アレンジに。"Gela Gela"も、スロウなアヴァン・ジャズ歌謡とでもいうような妖しい仕上がり。ラストを飾る"Ambassel To Brussel 1 / Wubit / Ambassel To Brussel 2"は、ダミアンがバンドのために初めて書き下ろしたという、12分を越える意欲的な長尺曲。エチオピア土着の音階をフィーチャーしつつ、ベルギーのアヴァン・ジャズロックバンド AKA MOONにインスピレーションを得て制作されたということもあり、エチオピアのアンバセルとベルギーのブリュッセルが曲名に入っています。タイトなバンドサウンドと小気味よいミクスチャー感も味わえる、ユニークな一曲です。

 本作は2月にメタカンパニー/オルターポップより日本先行で国内盤がリリースされています。また、機を同じくして、1stアルバム『Yetchalal』が期間限定で、1080円の廉価再発盤として販売されています。この機を逃す手はないと思いますよ!!!


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