2017年12月28日木曜日

2017年ベストアルバム20選

本年度の締めくくり。本年度の個人的にブッ刺さった20枚。

【過去のベスト】
2007年 ▼2010年
2012年 ▼2014年
2015年 ▼2016年



【本年度ベスト】

MAJOR PARKINSON『Blackbox』
Kevin Penkin『メイドインアビス オリジナルサウンドトラック』
井上鑑『OSTINATO』
Special Providence『WILL』
Opposite Day『I Calculate Great』
Evan Call『時間の支配者 オリジナルサウンドトラック』
Hans Zimmer『Live in Prague』
TO-MAS『フリップフラッパーズ オリジナルサウンドトラック』
デーモン閣下『EXISTENCE』
Shobaleader One『Elektrac』
Shnabubula『Cosmic Diaspora』
THE MANTLE『The Mantle』
Yomi no Kuni『Horrors』
LINKED HORIZON『進撃の軌跡』
HEVISAURUS『Mikä minusta tulee isona?』
V.A『オトカドール オトカミュージックコレクション2』
Night Flight Orchestra『Amber Galactic』
Isildurs Bane & Steve Hogarth『Colours not Found in Nature』
半田健人『HOMEMADE』
峰岸透、藤井志帆、永松亮『スプラトゥーン2 オリジナルサウンドトラック』


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▼MAJOR PARKINSON『Blackbox』



 ホーン、ストリングス、エレクトロサウンド、男女混成ヴォーカルが四味一体になったミクスチャー・アヴァン・ロックを聴かせるノルウェーのバンド。狂ったバランス感覚の上でこれでもかと美しくしなやかに成立させる剛腕。端的に言ってバケモノじみており、おっかない。矛盾をはらんだシネマティックミクスチャーサウンドの傑作。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/11/major-parkinson-blackbox.html



▼Kevin Penkin『メイドインアビス オリジナルサウンドトラック』

TVアニメ「 メイドインアビス 」 オリジナルサウンドトラック
Kevin Penkin
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 間違いなく今年のアニメサントラ最大の収穫であり、感情が揺さぶられるとてつもない傑作サウンドトラック。アニメも本当に素晴らしかった。名実ともにケビン・ペンキン氏の新たな代表作といっても過言ではなく、全力で薦めるほかないです。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/10/madeinabyss-soundtrack-kevin-penkin.html
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/11/soundworks-of-kevin-penkin.html



▼井上鑑『OSTINATO』

OSTINATO
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井上鑑 Halocline
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 アレンジャー/コンポーザーの井上氏の11年ぶりの新作ソロアルバム。ノーボーダーなプログレッシヴ・ポップスのある種の境地に達していて、職人の技と端正さ、自然体の凄みが凝縮されている。楽曲、演奏、詞やパッケージに至るまでこだわりの粋が尽くされており、染み込んで効いてくる。レコーディングメンバーはジェフ・ダグモア(drums)、山木秀夫(drums)、ジョン・ギブリン(bass)、高水健司(bass)、デヴィッド・ローズ(guitar)、今剛(guitar)と、トップクラスの饗宴状態。静かに熱い一枚。



▼Special Providence『WILL』



 ハンガリーのテクニカルフュージョンバンドの新作。これまでも聴きごたえのあるサウンドに定評があったのだけども、今回は激しくスリリングな化け方をした。ハイパーインストの極致で気が狂うほどキメ倒していて、有無を言わせぬカタルシスの連続。アルバムデビュー10周年を飾るにふさわしい快作に仕上がっている。



▼Opposite Day『I Calculate Great』




「動物のための教育的アートロック」「ジグソーパズル・アートポップ」を標榜するテキサスのミクスチャー・プログレ・トリオ。フックまみれで複数ジャンルの領域を侵犯する。しかもうまい上に仕事がやたらと早い。PRIMUSやFAITH NO MOREをよりリフ至上主義にした感じもあるわけだけど、彼らが一番音楽的に影響を受けているのはマドンナである。トンだ食わせもの。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/11/opposite-day-i-calculate-great.html



▼Evan Call『時間の支配者 オリジナルサウンドトラック
「The MUSIC of CHRONOS RULER」』

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 前述のケビン・ペンキン氏と、元Elements Gardenのエバン・コール氏は、日本国内作品の劇伴を手がける海外コンポーザーとして要・注目だと思います。氏の多彩さは菅野よう子さんというより梶浦由記さんのそれに近いと感じる一方で、ストリングスアレンジの巧さ、クワイアの扱いなど、エピックミュージックとしての魅せ方にも富んでいるのがミソ。本作ではブラスロック路線を追求しており、引き出しの多さも光ります。来年には「ハクメイとミコチ」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の話題作二作の劇伴を担当、ますます目が離せません。



▼Hans Zimmer『Live in Prague』

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 ハンス・ジマー・バンドのワールドツアーより、チェコ・プラハの模様を収めたライヴ盤。こちらの予想のはるか上をいくとんでもないパフォーマンスだった。70名以上の大編成バンドで10分越えメドレー組曲を連発する超ド級のシンフォニックロックが濃縮されていた。結果的にTHERIONとかのメタルオペラ系リスナーにもブッ刺さる内容になっていると思いますね。バンドのメインギタリストがガスリー・ゴーヴァンなのも強い。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/12/hans-zimmer-live-in-prague-2016.html



▼TO-MAS(伊藤真澄&ミト&松井洋平)
『フリップフラッパーズ オリジナルサウンドトラック』

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 なんでもアリなアニメ本編の世界観に呼応するかのように、三人それぞれの音楽性がフル稼働した極彩色の傑作スコア。鮮やかなる音のピュアイリュージョン。伊藤真澄さん、良原リエさん、コトリンゴさん、Babiさんによるトイピアノカルテット「toi toy toi」や、倍音S、東京混声合唱団といった顔ぶれにも注目ですね。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/02/welcome-to-pure-illusion.html



▼デーモン閣下『EXISTENCE』

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 如何様なアレンジでも対応できるスタイルを確立してきた閣下が、北欧の仕事人アンダース・リドホルムとともにメロハー、ポップチューン、ロックオペラ、そしてメタルで魅せた、「スクランブルド・ロック」の魅力と真髄がたっぷりの快作。三人の「わかっている」ゲスト作詞陣のいい仕事も光る。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/05/demon-kakka-existence.html



▼Shobaleader One『Elektrac』

Elektrac
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Shobaleader One
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 スクエアプッシャーが宇宙人と組んだ「スクエアプッシャー曲の生演奏再現バンド」であるショバリーダー・ワン。スクエアプッシャーのバッツンバッツンなベースプレイと地球外生命体バックバンドのタイト&タイトなアンサンブルでとんでもなくエキサイティング。たっぷりイキのいい人力ブレイクビーツサウンドだし、プログレ/ジャズ・ロック好き好きマンがウキウキしそうなくすぐりもしこたまある。北欧のRune Grammofonあたりの急進的ジャズ・ロック勢の出す音ともめっちゃシンクロしてる感があるのも、とても面白い。ボイラールームでのライヴ映像は最高です。ショバ代を払って観たいパフォーマンス。



▼Shnabubula『Cosmic Diaspora』



 11分、17分の大曲を擁する、全七部構成のウルトラマッシヴなチップチューン・プログレッシヴ・ジャズ・ファンク・インストゥルメンタルアルバム(ダウンロードは投げ銭)。傑作である。昨年のEP『Cybersoccer 4141』のさらなる拡張発展形としてこれでもかとコッテリやっている。定期的にソロピアノによるゲーム音楽カヴァー中心のライヴストリーミング「VGMCAST」を行っているほか、106人の有志から提供されたイメージやストーリーを即興演奏で表現するストーリーアルバムプロジェクトを立ち上げ、全13シリーズ予定でリリースを続けるなど、氏のあくなき挑戦は続く。



▼THE MANTLE『The Mantle』



 スムースジャズ/フュージョンの第一人者ケニー・Gの息子 マックス・ゴアリック率いるプログレッシヴ・メタル・バンド。往年のシュラプネル系かよというくらいに、快楽指数の高いプレイで弾きに弾きまくる新たなシュレッドギタリストが颯爽とシーンに登場。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/02/the-mantle-max-gorelick.html



▼Yomi no Kuni『Horrors』



 フィリピンの四人組ポストメタルバンド「黄泉の国」のデビューフルアルバム。スラッジ、ドゥーム、ヘヴィロック、ポスト/プログレッシヴ・メタルの濃厚なフルコースサウンドでもって、フィリピン発の地獄めぐりを体現する。この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/11/yomi-no-kuni-horrors.html



▼LINKED HORIZON『進撃の軌跡』

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 既発曲5曲と、書き下ろしの新曲6曲という構成で、一枚丸ごと「進撃の巨人」タイアップでアルバムを出してのけてしまった。新曲は「紅蓮の弓」「自由の翼」の変奏の趣があるのだけど、それが奏功してアルバムとしてもコンセプトとしても全力でガッチリ補強されていると思ったし、Revo氏の近年の仕事でもピカイチなくらいに焦点が定まっている。タイアッププロジェクトの真価を見事に発揮しつつ、「14文字の伝言」という、サンホラファンにもくすぐり(むしろ起爆装置かもしれないけど)を入れてるあたりはいつものRevoだなと。今から12年前に制作した『リヴァイアサン』『ガンスリンガーガール』の公式イメージアルバムで見せた強みが再度、遺憾なく発揮されましたね。


▼HEVISAURUS『Mikä minusta tulee isona?』

Mika Minusta Tulee Isona
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 結成8周年を迎えてなお、着ぐるみメタルの最高峰を更新し続ける、フィンランドが誇るジュラシック・ヘヴィメタルバンドの変則的新作アルバム。北欧ハードポップ/メタルのキャッチーな旨味をまっすぐに継承し、名実ともにトップクラス。MEGADETH、WINTERSUN、BATTLE BEASTからのゲスト参加もただのにぎやかしでない。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/12/hevisaurus-mika-minusta-tulee-isona.html



▼V.A『オトカドール オトカミュージックコレクション2』



 前作アルバムもヘビロテするほどに好きなのだけども、村井聖夜氏一人でほとんどの楽曲の作詞・作編曲を手掛けているというのは改めて驚異的だし、それでいて80年代から00年代まで網羅せんとする曲調の多彩さにも頭が下がる。全盛期の相川七瀬に通じる「Pink Rose」や、激アツなソロパートが差し込まれる「Cold Blood」など、容赦なく刺さる。ちなみにまったくの余談だが、オトカドールの楽曲のギタリストである佐藤敦氏はバークリー音大出身で、ジョーダン・ルーデスの日本版公式サイトの管理人でもある。アイカツ!などのコンポーザーであるMONACAの帆足圭吾氏(バークリー音大在籍時代にルーデスに師事)といい、ガールズ向けアーケードゲームで稀代のキーボードの魔術師との接点が見出せてしまうのは何の偶然だろうか。



▼Night Flight Orchestra『Amber Galactic』



 SOILWORKのビョーンとデヴィッド、ARCH ENEMYのシャーリー、MEAN STREAKのヨナスらがメロディック・ハード・ロックを惜しげなくやるバンド。こういう寄り合い的プロジェクトバンドって各人のスケジュール調整が大変でコンスタントにアルバムを制作できなさそうなものなのだけど、モチベーションは相当に高く、結成から6年でもう3枚も作っており、枚数を重ねるごとに練度が増している。80年代メロハーが本当に好きで好きでたまらないということがよく伝わってくる。



▼Isildurs Bane & Steve Hogarth『Colours not Found in Nature』

Colours Not Found In Nature
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Isildurs Bane & Steve Hogarth
Ataraxia (2017-05-05)
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 スウェーデンのチェンバー・ロック・バンド ISILDURS BANEの十数年ぶりの新作アルバムであり、MARILLIONのヴォーカリスト、スティーヴ・ホガースと共に制作された一枚。北欧と英国のまさかのコラボレーションといったところなのだけども、これが素晴らしいマッチング。よくよく考えてみればISILDURS BANEもMARILLIONもバンド名の由来はトールキンの中つ国の物語からなので、共演を果たすのも必然だったのではないかと言えなくもない。イシルドゥアの禍とシルマリルの物語。



▼半田健人『HOMEMADE』

HOMEMADE
HOMEMADE
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半田健人
ビクターエンタテインメント (2017-11-01)
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 氏の昭和歌謡への重い愛をありったけ注ぎ込んだ結果、「それっぽい」というレベルを超越して昭和歌謡そのものと化しており、聴けば聴くほどにどんどん馴染んでいく。えびす顔になってしまう。言葉選びや曲調の多彩さも半田氏のインプットとこだわりの豊かさを(もはや恐ろしくなるくらいに)感じさせるし、打ち込みのチープさすらもアレンジに溶け込んでるし、とにかく愛して愛して愛して愛しまくってこしらえあげた一枚は、聴く方にとってもとことん愛すべき一枚になっている。参りました。



▼峰岸透、藤井志帆、永松亮
『スプラトゥーン2 オリジナルサウンドトラック - Splatune2 -』

Splatoon2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune2-
スプラトゥーン2
株式会社KADOKAWA (2017-11-29)
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 アップデートで新たに追加されたバトルBGMのバンドである「From Bottom」「カレントリップ」「ω-3」はいずれもよりテクニカル&クロスオーヴァーな方向性を強めたものになった感があり、新たにサウンドチームに加わられた永松亮氏が持ち込んだ要素のたまものといえます。まさに新風を吹き込んだ。
http://camelletgo.blogspot.jp/2017/12/splatoon2-OST.html